バッグや靴・財布などのファッショングッズは革製品と呼ばれるように、
長らくその中心は牛など動物の革(アニマルレザー)素材でした。
ところが近年サステナブルやヴィーガンといった言葉が着目され、
その中でも廃棄されるパイナップルの葉からできたヴィーガンレザー
"ピニャテックス (piñatex)" が注目を集めています。
今回はピニャテックスの特徴や入手方法、使用製品をご紹介します。
■ピニャテックス (piñatex)とは
ピニャテックスはイギリスのロンドンにある
Ananas Anam社( https://www.ananas-anam.com/)
によって開発された次世代のアニマルフリーエコレザーです。
主な素材は廃棄されるパイナップルの葉の繊維で、その内訳は
・パイナップルリーフ繊維 :72%
・PLA(ポリ乳酸) :18%
・PU(ポリウレタン) :10%
となっています。
(pinatexの厚みやカラーにもよります)
PLAはとうもろこしやじゃがいもに含まれる成分で、
こちらも自然環境下で最終的に炭酸ガスと水に分解され、
世界が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)で注目される素材です。
パイナップルリーフ繊維、およびPLAはとても水に弱く、
そのままでは素材として日常的に使用できないため、
PUを少量混ぜることで、撥水・防水性能をもたせています。
ピニャテックスを1平方メートル作るには、およそ480枚の葉が必要で、
これはパイナップルの樹16本分にもなります。パイナップル農家は、
これまで廃棄していた葉を売ることで新たな収益を得られるようにり、
また繊維の生産工程で残った資源は肥料として農場にまくことができるそうです。
残念ながらこれらをどうやってレザー状にするのかは非公開ですが、
こうしてできたピニャテックスは比較的水にも強く、軽量です。
綿など従来の生地に比べて、革のように厚みを持っているため、
ファッショングッズの裏地だけでなく表素材にも使用可能です。
植物由来でサステナブルな素材というだけでなく、高性能。
まさに従来のレザーに代わる次世代のレザー素材です。
■レザーの成り立ち
服飾雑貨の主素材として、従来から現在までその多くで
牛を主とした動物の皮を鞣(なめ)した革が使用されています。
ちなみに、牛などを由来とするレザーもエコでないわけではなく、
革製品のために屠殺、生産されることは一般的にありません。
食用の副産物としての皮革を製品に利用しているためです。
(言うまでもなく動物は皮より肉の比率が大きく、
皮だけを採って肉を使わないと採算が合わない)
詳しくは以前の記事 皮はエコか残酷か をご覧ください。
ですが、革の鞣し工程が環境に悪影響を与えるイメージがあること、
※革を鞣す工程で使用する3価クロムが有害だと誤認されたり(実際は無害)、
海外の一部で有害な6価クロムが使用されていた(2015年から世界中で禁止)り、
詳しくは皮革技術協会(https://dictionary.jlia.or.jp/detail.php?id=1922)参照)
そして、近年のヴィーガン(菜食主義)に代表されるように
大手ブランドが毛付きのファーを製品に使用しないなど、
アニマルフリー素材に大変な注目が集まっています。
■ヴィーガンレザーとは
レザーの代替素材としては、現在多くの革製品でも見られる
PVC(塩化ビニル)やPU(ポリウレタン)のように、
化学的に作られた皮革(合成皮革、合皮)が存在します。
これらもアニマルフリーなので広義にはヴィーガンレザーと言えます。
ただし、特にPVCなどは環境にもあまり良くないと言われており、
世界中でSDGs(持続可能な開発目標)が掲げられたこともあり、
アニマルフリーなだけではなく、サステナブルでエコな
真の意味でのヴィーガンレザーが研究されてきました。
その一つがピニャテックスです。
ピニャテックスの他にも
・サボテン由来のレザー "DESSERTO" (https://desserto.com.mx/)
・きのこ由来のレザー "mylo" (https://boltthreads.com/technology/mylo/)
などが登場し、サステナブル素材が多数登場しています。
多くのサステナブル素材が登場していますが、
・革の質感から遠い(piñatex など)
・植物由来でない成分が多い(desserto など)
・高価,大量生産できない(mylo など)
など、まだまだ課題が多いのも事実です。
規模の経済と言われるように、
生産量が増えるとコストが下がり、世間への浸透が加速するため、
私たちはより多くの方にこのようなレザーを知ってもらえるよう、
また製品を生産していくようにメーカーとして努めています。
■ピニャテックスの特徴
実際にピニャテックスを使った製品を作りましたので、
メーカーとして感じた特徴を記載します。
1.見た目
遠目に見るとかなりレザーに近い見た目です。
ただ、ところどころに繊維感が残っていますね。
植物由来である事を示すためにあえて残しているのかも。
2.手触り(タッチ感)
これはまだ革とは遠く、紙(繊維)っぽい印象です。
麻や綿とレザーの間のような手触りです。
1年ほど使用しましたが経年変化もほぼありません。
これは繊維質のため仕方のないことだとは思いますが、
独特の他にない質感とも言えるかもしれません。
3.性質
組成としては10%だけですが、PUを少量混ぜることで、
少々の水では傷んだり変色せず、水に強い印象です。
また、革に比べて明らかに軽量です。測ったところ、
一般的な長財布と同じ形状で20~25%軽量でした。
この軽さは大きな特徴と言えると思います。
4.入手方法
現在のところ、Ananas Anam社から直接購入のみです。
探してみましたが、日本の代理店なども無いようです。
世界中から注目されていることもあり、
現在はほぼすべての商品が品切れのようです。。。(2020年12月)
こちらはなんとお値段2300ドル(およそ24万円)。
商用と言うより、エキゾチックレザーに代わる素材として、
アイコン的役割で発売されていたようです。
他にもH&MやHUGO BOSSでも製作されているようですが、
同じくエコな取り組みを表す宣伝記事としては出てきたものの、
有名ブランドで現在も販売しているサイトは見つかりませんでした。
(あれば是非コメント等で教えていただければ幸いです)
手前味噌ですが、弊社ではピニャテックス製品の取り扱いがあります。
弊社も創業60年ほどの革製品メーカーとして、
内装までアニマルフリーにこだわったお財布などを販売しています。
販売サイトはコチラ(https://www.nadaya.shop/shopdetail/000000000093/)
よろしければ是非御覧ください。
パイナップル由来のピニャテックスを中心に、
ヴィーガンレザー、サステナブルについて、
今回は記載させていただきました。
創業から60年以上、
本革製品を中心に生産してきた私たちとしては、
今までにない大きなトレンドの変化を感じています。
ですが、私たちや業界の事だけでなく、
地球規模で大事なことが何か しっかりと考え、
時代に合った製品をこれからも製造していきます。
本記事に関する内容はもちろん、
その他革製品に関するご質問・ご要望がございましたら、
お気軽に弊社までご連絡くださいませ。
Tel:06-6720-1522
E-mail:info@nadaya.co.jp